「東京Z学」鶯谷実習編
エリア 谷根千・日暮里
Zポイント 展示会場 休憩所
鶯谷、そのイメージは歓楽街という様相が強いが、寺社や博物館などの歴史深い文化的な側面も持っている。元々、下町の別荘地帯と呼ばれていた鶯谷は、多くの文学や芸術が育まれた地であったとともに、彼らが愛する食文化や生活様式も根付いていった。街のコンテンツが多いということは、それだけ多様な人が生活し、多様な「Z」*があると捉えられる。このルートでは、「東京Z学」実習編として「純粋」×「切実」×「逸脱」の三つの視座から鶯谷の街を歩き、ぜひ、あなたが感じるZの評価視点で、街を体験いただきたい。
*「Z」については「東京Z学」をご参照ください。
鶯谷駅南口
感性磨かれるアートに出会い、街の新たな魅力を見つけてみましょう。
鶯谷公園横の路地(東京都台東区根岸1丁目3-17)
まずは、鶯谷の暮らしぶりから。
鶯谷公園の南側、小さなゲートの先にある路地。ここには洗濯機や物置、道の真ん中には自転車と、誰の所有物かわからないモノが乱雑に置かれている。公共であるはずなのに、モノが語る所有者のプライベートが集合する、私たちからつくられた公共性が垣間見える。
(東京Z学評価:「純粋」○「切実」○「逸脱」○)
ツタの壁と空き地(東京都台東区根岸1丁目5-17)
生活の新陳代謝、そして侵食
隣家が解体されたことにより、突如露わになった外壁群。各々の建物の外壁は、生活の新陳代謝により生じた変遷(歴史)が重層し、異なる仕上げとして、その表情が曝け出されているようだ。今、徐々に侵食していく蔦が、光は導かれたこの外壁群へ、新たな新陳代謝を加えているのかもしれない。
(東京Z学評価:「純粋」○「切実」ー「逸脱」○)
元三島神社周辺(東京都台東区根岸1-7-11)
神様の下で飲むのも悪くない
蒙古襲来時に創建し、浅草に移設後、この地に戻ったので「元」三島神社という。駅のホームからも望むことのできる本殿は地面から切り離された2階にあり、その下には居酒屋やバーが居座る。ホテル街にぽつんと存在する社の様は、日常の営みと快楽がつくりだす、都市の生き様が表出した風景なのかもしれない。
(東京Z学評価:「純粋」○「切実」○「逸脱」○)
万上旅館(東京都台東区根岸1丁目9-2)
逸脱と純粋。
派手さを競い林立するホテル街。そこへ突如現れる和風旅館。そして、歩道側に傾き始めた敷地を囲む塀の純粋さが目に留まる。他のライバルを引き付けないコンセプトの清々しい逸脱さと純粋さを、今私たちはどのように受け取るべきか。
(東京Z学評価:「純粋」○「切実」ー「逸脱」○)
台東区立 鶯谷第5自転車駐車場(東京都台東区根岸3丁目3 3番先)
高架下の巨大空隙と駐輪場
一見どこにでもある高架下を利用した駐輪場だが、その中は約7mの天井高の都市の空隙である。蛍光灯に照らされた無機質なコンクリートの壁が、時間の流れを断ち切り、変わらずここに存在し続けようと振舞っているようだ。ここではその迫力と表出する意思の強さと、対峙を求められるであろう。
(東京Z学評価:「純粋」○「切実」ー「逸脱」○)
鶯谷は俳人・正岡子規ゆかりの地。道中にある子規庵を中心に、街中にも子規の俳句が各所に見つけられます。
みかど不動産(東京都荒川区東日暮里5丁目15)
ビルの上の空、街の風景
6差路の開けた交差点の角にある青色の可愛らしい外観。よく見ると3階の窓にはガラスはなく屋根もない。いわゆる看板建築でもなく、住居でもない。時々覗かれる洗濯物がこの場所の穏やかな日常を物語っている。そして、ただ切り取られた空が存在する。
(東京Z学評価:「純粋」○「切実」○「逸脱」○)
TNビル(東京都台東区根岸2丁目16-12)
共に時を刻むことを選ぶ、2つのビル
お茶屋の入る角地のビルを、テトリスをするかのようにかみ合わさって存在するグリーンタイルのビル。タイルが剥がれ落ちないように、緑のネットで覆われた姿は、ビルが残り続けるためのオーナーの切実な思いが表出した姿だ。この2つのビルは、一心同体にこのまま時を刻んでいくのだろう。
(東京Z学評価:「純粋」○「切実」○「逸脱」ー)
最後にとっておきの「Z」喫茶をご紹介。
世茂利奈(東京都台東区根岸2丁目15-7)
衣替えする喫茶店
蔦を全身に着飾ったレトロなフォントが目に入る喫茶店「世茂利奈」。向かいの歩道橋から望むとその奥行きの狭さに目を見開くが、中に入るとこじんまりとした温かな空気感。きっとこのカレーは地元に愛されてきたんだろうなと思いを巡らしつつ、移ろいゆく風景を想像する。
(東京Z学評価:「純粋」○「切実」○「逸脱」○)