K21アートプロジェクト
Praying for Tokyo 東京に祈る─「わたしは生きた」
内藤礼
1945年3月10日の東京大空襲は下町空襲とも呼ばれています(死者数は10万人を超える)。東京の現在から振り返る過去の街と人を思うとき、私たちは真の意味での鎮魂を祈念します。すなわち、惨劇を繰り返すことのない現在を確保し続けること。内藤礼は蔵前の寺院、長応院境内のギャラリー・空蓮房(くうれんぼう)に最小の彫刻—「ひと」—を配置し、墓地の慰霊碑には水を捧げる。また戦火の中、子供たちが避難した防空壕に「ひと」のインスタレーションを行い、なお祈り続けています。3つの場所で生が応答し合い、今生きている私たちを触発します。
(2021年6月現在)
1: 《無題》 2009(2008-)、神奈川県立近代美術館鎌倉、Photo by 畠山直哉
2: 《ひと》 2012、空蓮房、Photo by 畠山直哉
3: 《ひと》 2012、空蓮房、Photo by 畠山直哉
作家について
内藤礼 (美術家)
1961年広島県生まれ。美術家。主な個展に「地上にひとつの場所を」(佐賀町エキジビット・スペース、1991年)、「信の感情」(東京都庭園美術館、2014年)、「Two Lives」(テルアビブ美術館、2017年)、「内藤 礼―明るい地上には あなたの姿が見える」(水戸芸術館現代美術センター、2018年)。パーマネント作品に、「このことを」(家プロジェクト きんざ、直島、2001年)、「母型」(豊島美術館、2010年)。2011年、「ひと」の制作を開始し、東京、ニューヨーク、ベルリン、沖縄、広島などで発表。
image: 撮影:永禮 賢 Courtesy of Taka Ishii Gallery
《Praying for Tokyo 東京に祈る》について
時間の軸を縦にとれば、東京の過去から未来への流れがあり、横を見まわせば人や空間のつながりという軸がある。その交差点に立って我々は混乱の現在を実感する。過去の悲劇を忘れないこと、今から未来へできることは何か。まずは祈ることから私たちは始めていく。内藤 礼、宮永愛子、柳井信乃。3人の女性アーティストが湯島、蔵前、上野の各所で、過去を鎮魂し未来に捧げる「祈りの空間」をつくりだします。(小池一子)
内藤 礼、宮永愛子、柳井信乃という3人の女性アーティストとともに、東京の各所で過去を鎮魂し、未来へと捧げる「祈りの空間」をつくりだします。
「ひかりのことづけ」
宮永愛子
江戸幕府の官学所「湯島聖堂」、宮永愛子は図書館発祥の地といわれる湯島聖堂の大らかな回廊にひかりの陰陽を感じとります。ガラスの素材に関わってきたキャリアの中で捉えた光の魅力。特別なマテリアル、古代の石サヌカイトは時折美しい音色まで聞かせてくれます。都心とは思えぬ緑の中の静けさに満ちる、饒舌な自然と街の音とともに、ひかりに導かれるインスタレーションです。
「Well Temperament 良律」
柳井信乃
新進アーティストの柳井信乃は、湯島聖堂の空間を音の場と捉えます。制作スタジオがロンドンのオリンピック・スタジアムの近くにあり、その環境と人間の行動の観察から新作が生まれました。ウェルテンペラメントはバッハの「平均律ピアノ曲集」の英語名で記されているWell-Temperedから引用。今回のプロジェクトでは、ウェルテンペラメントにあたる「良律」と言う中国語を採用し、音楽家たちが求めた調和をもたらす音律と、現在の社会の状況を重ね、「良律」とは何かを考えさせられるインスタレーションとなっています。
キュレーター
小池一子 (クリエイティブディレクター/佐賀町アーカイブ主宰)
1980年「無印良品」創設に携わり、以来アドバイザリーボードを務める。ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展日本館「少女都市」(2000年)、「横尾忠則 十和田ロマン展 POP IT ALL」(2017年、十和田市現代美術館)などの展覧会の企画、ディレクションを手がける。1983年にオルタナティブ・スペース「佐賀町エキジビット・スペース」を創設・主宰し、多くの現代美術家を国内外に紹介(〜2000年)。近著に『イッセイさんはどこから来たの? 三宅一生の人と仕事』(2017年、HeHe)他。2019年、文化庁メディア芸術祭功労賞受賞。武蔵野美術大学名誉教授。
Photo: Taishi Hirokawa
会場
所在地
東京都台東区蔵前4-17-14 長応院内
アクセス
・都営地下鉄 浅草線「蔵前」駅 A0出口より徒歩3分
・都営地下鉄 大江戸線「蔵前」駅 A5出口より徒歩3分
・都バス 草43 千住倉庫〜浅草橋、都バス 東42 南千住〜東京八重洲口「蔵前1丁目」または「蔵前2丁目」より徒歩6分
・都バス 塚20 大塚駅〜錦糸町駅前「寿3丁目」または「三筋2丁目」より徒歩5分