アートプロジェクト

The Monument for The Bright Future TOKYO/2020

太湯雅晴

<公募アートプロジェクト「ソーシャルダイブ」>

美術家の太湯雅晴は、かつて福島県双葉町に掲げられていた標語看板「原子力 明るい未来の エネルギー」から「明るい未来」を本歌取りし、都内に点在する岡本太郎のパブリックアートにその文字を掲げます。

これは東京2020オリンピック開催期間中限定で出現する、オリンピックを祝祭するための記念塔である。

2012年、その前年の3月11日に発生した東日本大震災とそれに起因する福島第一原子力発電所(以下、「フクイチ」と記す)事故をテーマに据えた作品を制作した。その際注目したのはフクイチの立地する福島県双葉町に掲げられていた「原子力 明るい未来の エネルギー」という標語だった。以降、前記標語から本歌取りした「明るい未来」をキーワードにプロジェクトを展開している。

今夏にオリンピック開催を控え、世情は無邪気な空気感に包まれている。しかしオリンピック開催の為に復興を謳いながらも3.11の記憶は急激に忘却されつつある。私はオリンピックに関連するニュースに触れる度、過去を置き去りにしたような違和感を拭いきれない。一方でいつまでも過去をネガティブに引きずるのではなく、この違和感を払拭することは出来ないものかとも思う。

その一つの解として、日本の社会に一時代を築いた芸術家 岡本太郎(1911 – 1996)の「対極主義 ※」を現在に蘇らせる。1970年に開催され6400万人を超える入場者を集めた大阪万博のシンボルであった大屋根が姿を消した一方で、それを突き破りながら聳え立っていた太陽の塔が現存していることを考えると、太郎の思想は今も有効であるといえる。ポジティブな世情とネガティブなニュアンスを纏ってしまった「明るい未来」を都内に点在する岡本太郎のパブリックアートを舞台に対置し、反発により生じるインパクトによって新たな価値観を創造する。そこに現れるのは言うまでもなく文字通りの「明るい未来」だ。
※対立/矛盾する概念を妥協折衷することなく対置し、結果として猛烈な不協和音を誘発させるという芸術観。

20191231 太湯雅晴

追記
2020年3月24日、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により東京2020オリンピックの開催延期が決定された。本来、オリンピックの開催時期に合わせ本プロジェクトを実施するスケジュールで上記ステートメントを記した為、私は現状に応じて内容に調整を加える必要を感じた。状況は今も時々刻々と変化している。9年前と同じように、既存の社会システムは機能不全に陥っている。同様に本プロジェクトも、2020年の東京オリンピックを祝祭するというコンセプトのままでは成立しなくなった。現実の世界で私にできることはそれほど多くない。だが、来夏開催に向けて動き出したオリンピックを含む来たるべき「明るい未来」の為にも、私はこのプロジェクトを当初のスケジュール通りに実現を目指そうと思う。

20200409 太湯雅晴

1: 《The Monument for The Bright Future TOKYO/2020》 完成予想図、2020、数寄屋橋公園、Photo by Masaharu Futoyu
2: 《原子力 明るい未来の エネルギー》 凡そ30年前、福島第一原子力発電所の所在する福島県双葉町で市主催の原発標語コンクールが行われ、当時、小学生だった少年の応募案が選ばれた。原発を讃える内容のそれは町の入口に掲げられ、町に来る人々を迎えた。
3: 《INTERVIEW WITH YUJI ONUMA》 The interview with Yuji Onuma who made a slogan “ATOMIC POWER IS THE ENERGY OF THE BRIGHT FUTURE” Around 30 years ago.

作家について

太湯雅晴 (美術家)

公共の場に於ける創造的行為の在り方をテーマに活動。社会制度に介入し、そのシンタックスを組替えることで、日常の中にバグのように違和感を生じさせる。

主な展示に「さっぽろアートステージ2017」(地下歩行空間、札幌、2017年)、 Think of ENERGY(Federal Foreign Office、ベルリン、2014年)、黄金町バザール(黄金町、横浜、2014年)、 2:46 and thereafter(Pepco’s Edison Place Gallery、Washington, DC、2012年)、六本木アートナイト(東京ミッドタウン、東京、2012年)、LOCKER GALLERY at TOKYO NATIONAL MUSEUM(東京国立博物館、東京、2007年)。主な受賞にゲンビどこでも企画公募2010展 入選(広島市現代美術館、広島、2010年)。

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