ソーシャルプロジェクト

批評とメディアの実践プロジェクト[RELATIONS]

東京ビエンナーレのプロジェクトの一つとして「リレーションズ:批評とメディアの実践のプロジェクト」を立ち上げます。このプロジェクトは、主としてウェブやソーシャルメディアを中心にデジタル化とグローバル化の時代の批評とメディアのあり方を考えると同時にその実践を行うことを目指します。

21世紀に入って、アートは大きく変容しつつあります。美術館やギャラリーを中心としたアートは、コミュニティや社会、都市空間、そしてデジタル空間へとその活動の中心を移しました。デジタルメディアの発達は、芸術をますます非物質化しつつあります。参加型芸術、ソーシャリー・エンゲージド・アート、コミュニティ・アート、関係性の美学、エコ・アート、バイオ・アート、スペキュラティヴ・デザイン、ポストヒューマニズム…こうした芸術文化や人文学の新しい語彙は、この新しい動向の登場を対応したものです。

けれども、その一方で批評の役割は後退しているように見えます。たとえば、アクター・ネットワーク理論で知られる人類学者のブリュノ・ラトゥールは、「なぜ批評は息切れをしてしまったのか?」と問いかけ、近代的な思考の中心だった「批評」の終焉を主張しています。実際、アートという領域に限ってみても、アーティストやキュレーター、アート・ディーラーやコレクターの活動は活発になっているものの「批評家」の役割は後退しているようにも感じられます。本当に「批評」は終わりを迎えつつあるのでしょうか。

リレーションズは、「批評」の時代が終わったとは考えません。 それどころか、むしろ今こそ「批評」が必要な時代だと 考えています。なぜなら、現代とは、アートやそれを取り 巻く社会や政治、経済の状況が大きく変化しーーーより大きな 観点でいえば、人類が大きな危機を迎えているからです。 こうした危機の時代にこそ、新しい状況を記述する新しい 言語を生み出す「批評」が必要とされているのです。

しかし、その新しい「批評」はかつてのようなテキストを 中心とした「美術批評」のような形式ではないかもしれません。 むしろ新しいメディアを積極的に取りながら、「批評」の対象と適切な距離を取るような新しいメディア言語の体系からなるのです。

「リレーションズ:批評とメディアの実践のプロジェクト」は、新しい時代の新しいアートの形式をめぐる批評とメディアの実践の試みです。それは、アートを中心としながらも、アートとその隣接領域、社会や経済、政治や科学テクノロジーの「関係性」を探るものです。それは「東京ビエンナーレ」の一部をなしつつも、「東京ビエンナーレ」やそれに関連するプロジェクトを批判的に検証しつつ、新しいアートのあり方を模索する試みなのです。

RELATIONS プロジェクトディレクター 毛利嘉孝

実施内容

[RELATIONS]は、以下二つを活動の柱とする。
・多様で多元的な批評空間の恒常的な場としての「ウェブジャーナル」
・専門家が集い、集中的に議論を行ったり総括の場としての「シンポジウム」

(1)ウェブジャーナル

https://relations-tokyo.com/

(2)シンポジウム「RELATIONS meeting」

https://www.youtube.com/channel/UCDHKbE_B9LZt2JDqgFJwOkA

RELATIONS 編集委員

毛利嘉孝 ( 東京藝術大学大学院・国際芸術創造研究科・教授 )
加治屋健司 ( 東京大学大学院・総合文化研究科・教授 )
清水知子( 筑波大学・人文社会系 ・ 准教授 )
鴻野わか菜 ( 早稲田大学・教育・総合科学学術院・教授 )
南後由和 ( 明治大学・情報コミュニケーション学部・准教授 )
ジェニファー・ワイゼンフェルド (デューク大学・美術・美術史・ヴィジュアルスタディーズ学科・教授 )
エイドリアン・ファヴェル ( リーズ大学・社会学・社会理論学部・教授 )
クレリア・ゼルニック (パリ高等美術学校・芸術哲学・教授 )
グンヒルド・ボーグリーン( コペンハーゲン大学・芸術文化学部美術史・視覚文化・准教授 )
ジャスティン・ジェスティ (ワシントン大学・アジア言語文学・准教授)
パン・ルー/潘律(香港理工大学・中国文化学系・助教授)
ミシェル・リム(シンガポール南洋理工大学・スクール・オブ・アート・デザイン・アンド・メディア・助教授)
パク・ヘヨン(ニューヨーク市大学)

(2021年3月現在)

プロジェクトディレクター

毛利嘉孝 (社会学者、東京藝術大学教授)

1963年、長崎生まれ。東京藝術大学大学院 国際芸術創造研究科教授。京都大学卒業、広告会社勤務後、ロンドン大学ゴールドスミスカレッジでPhDを取得。特に現代美術や音楽、メディアなど現代文化と都市空間の編成や社会運動をテーマに批評活動を行う。主著に『ストリートの思想』(日本放送出版協会)、『文化=政治』(月曜社)、『増補 ポピュラー音楽と資本主義』(せりか書房)、編著に『アフターミュージッキング』(東京藝術大学出版会)。

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