K26アートプロジェクト
東京Z学
東京Z学研究所
Zとは、「絶望」のZです。
Zの次はAであることから、Zは絶えず次なるAを求めている状態といえます。
私は2015年に「明るい絶望」というタイトルの個展を開催しましたが、Aとは、この存在の「明るさ」であり感情的には「愛」のAです。価値の生成過程において誰しもがその価値の存在をあきらめてしまうほどの絶望の縁から、凝縮した愛(または存在の明るさ)のエネルギーが生まれている状態をZとして捉えています。
私は、この「Z=絶望(愛、明るさ)」に達している存在を知覚・研究する事を「Z学」と命名します。
路上観察学や考現学の先にあるこの「Z学」は、現時点では発芽段階ですが、社会学や民族学、都市学、芸術学等、多くの学術的領域につながり新しい論点と視座を持つ研究として展開していきます。
再開発で超高層化していく都市の新陳代謝の中で時間が止まったかような個人商店や登記簿の所有者が不明で誰も手をつけられなくなっている住宅。道路が拡張され新しく整備された歩道や路肩でもずっと存在し続けている石や標識等の所有者不明なモノなどなど。私にとって「R」(リノベーション)という概念では太刀打ちできない「Z]としての多様な存在は、「芸術」を創造していく事と同じベクトル上にあります。一度、このZの視点を獲得してから街を歩くと「芸術」という狭い概念を超え一途で多様な私たち文化の生々しい姿が露呈されてきます。開き直って、もうどうにでもしてくれと自我を解放したような初源的な状況となり素の存在として見えてきます。極限的な「寛容性と批評性」を獲得している「Z」は、東京のもう一つの価値存在に警笛をならす思想といって良いかもしれません。
東京ビエンナーレでは「見慣れぬ景色へ」として、東京をフィールドに作家の多様な思想を持った作品の制作・展示が行われますが、その発表会場の多くは、私が日頃のZ学的フィールドワークから一つ一つ手探りの中で発掘してきたものです。その意味においても東京ビエンナーレは、「Z」である状況に価値を見出し、その絶望を一点の希望のエネルギーに換えていく新しい都市の文脈を生み出す評価と創造の実践の場と言えます。
まず、東京をフィールドとして展開をしていく上で「東京Z学」として研究所を発足しました。まだまだ未開拓な都市に挑む東京Z学、研究員になりたい方は、遠慮なくご連絡下さい。
また、是非、Z学の視点も獲得して東京ビエンナーレを楽しんで頂けたらと思います。
中村政人 (東京Z学研究所所長)
Z学の構成要素は、東京ビエンナーレのもう一つのテーマである「純粋」×「切実」×「逸脱」の三つの視座を持ち、その度合いにより評価を試みています。この「東京Z学は、東京ビエンナーレの会場を獲得していく中で得られた、街に潜む「Z」を私たちなりに批評しています。「Z」の批評は、観察者の立場や興味などによって異なる視点を持つものであり、Z学は、東京ビエンナーレの展開において位置付けられる都市批評とアートの文脈を重ねるアプローチとして、思考と実践を継続するものと位置付けています。
今回私たちは、「Z」であることを以下の3つで批評しています。
純粋:経済的な欲望や業の深さがそげ落ち純粋性が高まっている存在感。
切実:目的や機能など合理的な理由を超えた切実な精神を感じる行為性。
逸脱:平凡な状態から観た事や体験したことのない新鮮で逸脱した表現性。
東京Z学の体験方法
●「Z」の紹介とおすすめルートを公開しています。
googleマイマップはこちら
●SNSアカウントでは、東京Z学の紹介と合わせて、みなさんからのコメントやおすすめの「Z」を投稿・閲覧できます。
・Facebook
・Instagram (準備中)
(2021年6月現在)
1: 御徒町鉄棒
2: 神田駅前狭まる住宅
3: 神田あさひ
Photo by Masato Nakamura
プロジェクトメンバー
東京Z学研究所
東京Z学研究所は「東京ビエンナーレ2020/2021」における新規展示会場の開拓チームによって構成されました。日々東京のまちを歩きながら、都市に潜む「Z」の可能性を見出し、未来への展望につながる次なる価値を探り研究活動に励んでいます。
研究所長:中村政人(https://tb2020.jp/project/yubido-restoration-projectnikui-hodo-yasashi/)
主任研究員:佐藤結子、一色ヒロタカ
研究員:渡邉莉奈、高橋慧一、内藤あさひ
特任研究員:秋田犬のの
会場
所在地
東京都千代田区神田小川町2-2-7レインボービル9F
アクセス
・都営新宿線「小川町」駅より徒歩1分
・東京メトロ丸ノ内線「淡路町」駅より徒歩3分
その他
お問い合わせ
tb2020.jp/contact
(東京ビエンナーレ事務局)