「東京Z学」神田実習編
エリア 神田・湯島・上野・蔵前
Zポイント 展示会場 ストーリーテラー
都市をミクロな目線で観察すると、人々の「営み」を見つけることができる。強い思いを持って残し続けている「営み」もあれば、残り香のように意図せず在り続けている「営み」もある。 今、未来の「営み」に向かっているアートを巡りながら、過去の「営み」の断片を巡り、想起していくルート。このルートでは、「東京Z学」(https://tb2020.jp/project/tokyo_z/)実習編として「純粋」×「切実」×「逸脱」の三つの視座から鶯谷のまちを歩く。ぜひ、あなたが感じる評価レベル、評価軸をもってまち歩きを行なっていただきたい。※さらに詳しく「Z」を体験したい方はこちら→PDFのURL
優美堂
再び目覚めた優美堂から、神田のまちに眠っている魅力を探しに出発してみましょう!
優美堂(東京都千代田区神田小川町2丁目)
ひとりひとりの思いを守り抜く、アートの力。
再開発が急激に進み、個人商店がつぎつぎと閉店を強いられている、東京小川町。そこにたたずむ、額縁専門店優美堂。富士山が描かれた看板建築は、小川町のランドマークとして、創業当時の80年前から、神田の人たちに愛され続けてきた。でも、そんな長年の愛ですら、変化の波に飲み込まれるのは一瞬だ。その押し寄せる波を押し返し、まちのシンボルとして息を吹き返すことができたのはなぜか。理屈では説明不可能な、アートの力を、ここで目撃しよう。
●アートプロジェクト
会期:7月10日(土)〜9月5日(日)
優美堂再生プロジェクト ニクイホドヤサシイ
中村政人
●神田インフォメーションセンター
レインボービル9階(東京都千代田区神田小川町2-2-7レインボービル9F)
開拓者たちのアジト
東京は、ここ数十年で大きく、また急激に姿を変えてきた。一方で、時間が止まっているようにも感じられる、古くからの痕跡も残っている。レインボービルは、多様な空間軸と時間軸の中をさまよう都市の調査で発掘された建物の一つである。開拓者たちの思い、そして、将来開拓されるのを心待ちにしている建物たちに思いを馳せよう。
●アートプロジェクト
会期:7月10日(土)〜9月5日(日)
東京Z学
東京Z学研究所
自販機のたまり場(東京都千代田区神田須田町2丁目)
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↑音声・動画ガイド【ストーリーテラー2021/見なれぬ景色へ】↑
思想が売られる異様な一角
柳原通りから少し外れた先、怪しげな雰囲気を醸し出す自販機置き場がある。 ここは自販機だけではなく、誰かの思いや消費を訴えかけるように、看板や貼り紙が至る所に設置された場所だ。自販機の中身も「謎めいた物語」や「カブトムシ」だったりと、その集合した様は、ここに集まる思想が、ただただ無人で売られているかのようだ。 アートの域にまで昇華されたこの場所は、逸脱した人の思想が純粋かつ切実に顕れた場所。 (Z学評価:「純粋」○「切実」ー「逸脱」○)
風月堂ビル B1-7号室(東京都千代田区神田紺屋町46)
正体不明確のものたちの生態系
東京は、雑居ビルで溢れている。法律上の定義が存在しない「雑居ビル」の中には、明確な業態をもたないテナントがパラサイトのごとく棲みつき、有機物のごとく、誰も予測できない姿へと変貌を遂げるのだ。一般論では説明不可能な事象が日常の一部となっている東京では、変化をつづけるワークインプログレスの状態こそが、常識なのかもしれない。
●アートプロジェクト
会期:7月10日(土)〜9月5日(日)
キカンキ・キ
大木裕之
良心的な店あさひ(東京都千代田区神田須田町1丁目12)
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逸脱を象徴する居酒屋
東京は、雑居ビルで溢れている。法律上の定義が存在しない「雑居ビル」の中には、明確な業態をもたないテナントがパラサイトのごとく棲みつき、有機物のごとく、誰も予測できない姿へと変貌を遂げるのだ。一般論では説明不可能な事象が日常の一部となっている東京では、変化をつづけるワークインプログレスの状態こそが、常識なのかもしれない。
家庭料理みずむら(東京都 千代田区 神田司町 2丁目10−6)
ずっとここにある安心感
「家庭料理」と書いてある料理屋が、料理だけでなく、店内の装いまでもが家庭的な懐かしい気持ちにさせてくるところはなかなかない。 小綺麗さと同時に、少々乱雑なメニューの貼り方や調度の置き方。これらも、いつからそこにあるのか検討もつかない。全てがこの家庭的な場所の一部となっている。 でもそれが安心を与えてくれている。 ここはずっとこんな感じなんだろうなと感じさせる。 昔から在り続けた営みの連続性が、ただただ純粋に現れている。 (Z学評価:「純粋」○「切実」ー「逸脱」ー)
野々村商店跡(東京都千代田区神田司町2丁目14)
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群を成して景色となる
古い建物が街の中に取り残される姿は時折見かける。しかし、それは建物単体での話。 この場所は群を成して残り続けている。世界の最小単位は、私自身が捉えられる、本当に小さな周囲の環境かもしれない。この路地に入ってしまえば、そこではむしろ自分が異質であり、自身の価値観すら危ぶまれる。 かつての営みの痕跡を、時間と共に群として純粋に保っている。まるで作品のように。 過去の普通が今となっては逸脱したものとしてそこにはある。 (Z学評価:「純粋」○「切実」○「逸脱」○)
お昼時なら、是非味覚でも神田を楽しんでみてはどうでしょう?
八つ手屋(東京都千代田区神田司町2-16)
染み込む伝統と歴史
一八通り沿い。通りを歩いていると、どこからともなく揚げ物の香りが漂ってくる。香りの元は八つ手屋という天ぷら屋。100年以上という月日は、建物の立ち姿から伝わってくる。土間の客席や時間をかけて染み込んだ壁の油汚れなど、営み続けた軌跡が随所に見え隠れしている。千円以内で食べられる天丼は、昔ながらの甘さ控えめで庶民向けなタレと、注文してから一つ一つ丁寧に揚げてくれるアツアツな天ぷらがたまらない。 (Z学評価:「純粋」○「切実」○「逸脱」ー)
顔のYシャツ(東京都千代田区神田小川町2丁目1)
移ろうまち見るご尊顔
街の喧騒と変化をずっと眺め続けたその表情。それはひときわ目立つ大きな顔の看板。街の表情が変わる中、その表情はずっと変わらない。インパクトとシュールさが絶妙なバランスで共存している。実はこの看板、戦前にこの「顔のYシャツ」を創業した店主の父親の顔をそのままデザインとしたとのこと。 店主のこの店にかける純粋な思い、それを体現した不敵な笑みは、どんなに街が変化しようとも、これからも街の中で逸脱し続けることを予感させる。 (Z学評価:「純粋」○「切実」○「逸脱」○)
のの台座とトタン壁のビル(東京都千代田区神田小川町2丁目3−12)
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フォトスポット:ツギハギトタン
大通りに向けて見えるトタンのパッチワーク。かつて隣にあった建物に隠れていた「見せない部分」は、街の新陳代謝によって、意図せず街に現れた。トタンという素材で、生活と共に継ぎ足しを繰り返しながら重ねられてきた痕跡の数々。もはや生命力というべき力強さを感じる。 そして、空き地となった隣地。一部残された基礎が、台座のような関係性を持ち鎮座した。 台座に腰掛け、壁画のようなトタン壁を背にすれば、たちまち時の流れが生んだ作品の一部となる。 (Z学評価:「純粋」○「切実」○「逸脱」○)
棟梁の家(東京都千代田区神田小川町2丁目3−12)
破壊消火の気質
立て掛けられた建設用の木足場材が目を引く、古さと同時に、ある種の風格を感じさせる家。 この家の主人は江戸時代から行われていた、「破壊消火」を許されていた。建物を壊し消火する、当時の火消し手段である、 破壊消火が許されているということ、すなわち大工としての腕前が一流であり、大工達をまとめ上げる立場であったということ。つまりは棟梁。 主人の威厳や職人としての気質が家の面構えに顕れている。 (Z学評価:「純粋」○「切実」○「逸脱」○)
HONDA看板跡(東京都千代田区神田神保町1丁目35-19)
時間をかけた、街への刻印
向かいの商業建築や隣接する店舗、そして周囲オフィスが更新されていく中、肩を寄せ合い残り続けたであろう2つの看板建築。刻印のような「HONDA」の看板跡からは、かつての使われ方がおぼろげに想起され、古びたシェードや至る所から噴き出した錆から時間の経過を察する。純粋な時の流れを感じさせる。錆びや汚れで元の色味が分からなくなったHONDA側と色あせた右側が、かつてどのような色彩を街へ与えていたのだろうか。 (Z学評価:「純粋」○「切実」○「逸脱」ー)
錺葺の建物(東京都千代田区神田神保町1丁目27-10)
営みと共に朽ちてゆく
明治時代後半から関東を中心に多く普及した「銅板」を使った壁面装飾。耐火や耐久性に優れていたが、第二次世界大戦後に銅が不足し、一気に衰退した。 そして、銅加工の技術を受け継ぐ職人が少ない今、補修されることもままならないまま、時の流れを純粋に受け入れることとなった。 (Z学評価:「純粋」○「切実」○「逸脱」ー)
最後は珈琲の香るレトロな空間で優雅に一息。
長い道のりお疲れ様でした。まちに眠る魅力を見つけることはできたでしょうか?
ミロンガ周辺(東京都千代田区神田神保町1丁目7)
香りが継承し続ける珈琲路地
どこからともなく漂う珈琲の香り。それを辿り路地の方向へ進んでみると、そこは老舗の喫茶が立ち並ぶレトロな空間。 この香りは、70年前から続くもの。当時からここは珈琲の香る路地として、多くの人の休息の場としてあり続けた。 周囲の開発が進む中、香りを絶やすことなくこの風貌を残す路地は、店主たちの思いで残り続けた情景なのかもしれない。 (Z学評価:「純粋」○「切実」ー「逸脱」ー)