東京開発のはじまりを歩く

エリア 大丸有・日本橋・京橋・銀座

展示会場 休憩所 ストーリーテラー

「開発」とは、その時代時代の未来の都市を描く行為である。江戸城と武家屋敷からはじまり、明治維新からは戦争と震災に揺さぶられながら日本経済の屋台骨たるビル群を成し、やがてくるSDGsと拡張現実の未来へと、風景は人の手でつくられていく。イノベーター 岩崎 弥太郎のDNAを受け継ぐ人々によって、この街の終わりなき都市開発はいまこの瞬間も続いている。このルートでは、時代ごとに描かれた未来像が連なる大丸有エリア(大手町・丸の内・有楽町)を、都市開発のキーマンたちのストーリーテリングを聞きながら通り抜け、銀座四丁目交差点の時計塔を目指す。

東京駅

東京駅から、芸術巡りのスタートです。

行幸通り(東京都千代田区大手町1丁目1-1)

東京と、心の移り変わり。

東京は、極端に異なるスケールがコラージュされた街である。お隣さんの洗濯物の香りが漂うほど、小さな木造住宅が密集する谷中。計算しつくされたブロック割と高層ビルが、人間的な領域を逸脱しはじめる大手町。永遠に続く工場風景が人間の気配をぼやかす豊洲。東京を横断するということは、時間の流れ、そして、人と人との心理的距離が、無意識的に移り変わる、不思議な経験の連続なのだ。

アートプロジェクト(AR作品)
《都市と経験のスケール 》
AR三兄弟

丸の内ビルディング(東京都千代田区丸の内2丁目4-1)

未来像の1ページ目

1923年に竣工した「丸ノ内ビルヂング」は、昭和戦前期最大の大きさを誇る巨大ビルであり、「東洋一のビル」といわれた。現代ではすっかり定着した、上層部がオフィスビル、低層部がショッピングモールという構成も、日本では、ここ丸ビルではじめて導入されたのである。「最先端」の定義は時代ごとに更新される。その更新のストーリーを聞きながら、先駆者たちの願いに思いをはせよう。

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●ストーリーテラー2021/見なれぬ景色へ
大丸有で逢いましょうⅢ〈丸ビル〉
藤井宏章(三菱地所)

東京駅 丸の内駅前広場〈アガペの像〉(東京都千代田区丸の内1)

誰かを愛する心、その結節点。

一日130万人以上の人がせわしなく行き来する東京駅。「駅」とは、私たち一人ひとりにとって、それぞれ違う意味合いを持ち、それぞれ異なる感情を抱く場所である。第二次世界大戦中の人々にとって東京駅は、戦地への入口。日常と非日常が分断され、そしてまた結ばれることをただひたすら願う、運命の場所であった。そんな場所に建てられた「アガペの像」に込められた思いとは。そして、わたしにとって「駅」とは、どんな思いの結節点なのだろうか。

●ストーリーテラー2021/見なれぬ景色へ
駅と戦争1 − 東京駅 丸の内駅前広場〈アガペの像〉
木下直之(静岡県立美術館館長)

URBAN TERRACE(東京都千代田区丸の内2丁目2)

「私」の輪郭が、曖昧になるとき。

歩道と車道。私有地と公共空間。アナログとデジタル。仕事とプライベート。人間は、あらゆるものに対して分断線を引いてきた。明確な境界線は、管理上都合が良い。現代、その境界線は曖昧だ。マイホーム、マイカーなどの言葉が流行した「私だけ」のものの所有が社会的成功を象徴していたかつての高度経済成長期。現代では、モノ・体験を「私」以外の誰かと共有することの豊かさに、スポットライトが当たり始めている。

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数寄屋橋公園(東京都中央区銀座5丁目1-1)

矛盾の間にある真実

数寄屋橋公園は、銀座の喧騒の中にたたずむ小さなオアシス。穏やかな緑の隅で、荒々しい岡本太郎の「若い時計台」が、違和感を演じつつ風景に溶け込んでいる。思うに、未来像を描くという行為は、きれいごとを羅列するだけでは済まされない。計算機ではじき出せる、単純で明確な未来と同じ分だけ、予想しきれない複雑で向き合いたくない未来もきっとある。対極にあり矛盾し合う二つの群像が重なり合う瞬間が、新しい価値観を生み出すのだ。

アートプロジェクト
The Monument for The Bright Future TOKYO / 2021
太湯雅晴

三菱地所一号館(東京都千代田区丸の内2-6-2)

未来像を描く物語、そのはじまりの地。

東京駅と皇居の狭間にある丸の内。メガバンクや大企業が立ち並ぶこのエリアは、グランドデザインが描かれた130年前から、東京の中心業務地区としてビジネスのコアとして君臨してきた。この丸の内の長い開発の歴史のはじまりが、三菱一号館である。先駆者たちが描いた未来像、そして、それを引き継ぎながらさらなる更新を続けるまちづくりの担い手たちが今描く未来像に、この出発地点で思いをはせよう。

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●ストーリーテラー2021/見なれぬ景色へ
大丸有で逢いましょうⅡ〈三菱一号館美術館〉 (河野安紀)

新東京ビル(東京都千代田区丸の内3-3-1)

ゲニウス・ロキとの通信。

テクノロジーの発展は、人と都市との認知的、身体的な関係性に変革をもたらした。高度経済成長期に建てられた新東京ビルの、装飾的な天井と、光り輝くテラゾー床。微妙にカーブした階段と、シンプルでありながら美しい曲線を描く手すり。こだわりが詰まった新東京ビルを、スマートフォンという新しいレンズを通して見れば、単なる表面的な試行錯誤の、さらにその奥にあるこの場所に込められた思いと、同期できるのではなかろうか。

アートプロジェクト(AR作品)
Anything is better than the truth! (井田大介)

国際ビル(丸の内仲通り)

グランドレベルのベンチのある景色

TOKYO BENCH PROJECTで初めてベンチ設置をする丸の内仲通り。日常には以外とベンチがなかったこの場所に、人々の憩いの椅子がやってきます。

●ストーリーテラー2021/見なれぬ景色へ
田中元子のベンチラジオ〈国際ビル編〉 (グランドレベル (田中元子+大西正紀))
※間もなくアップ予定

国際ビル[地下街](東京都千代田区丸の内3-1-1)

多様なアクティビティーがコラージュするとき。

三菱地所、阿部美樹志、谷口吉郎が連携して設計し、1966年に竣工した国際ビルは、劇場・オフィス・美術館が、ひとつの建物に収容されている多機能ビルである。複数の機能を有するこの場所は、普段であれば交じり合うことのない、目的の異なる人たちが出会うきっかけをつくるサンクチュアリである。それはまるで、この10年間で急激に多国籍化を遂げ、異なる背景を持つ人々が溶け合う、新しい東京の在り方を見ているようだ。

アートプロジェクト
東京影絵クラブ (川村亘平斎+宮本武典)

micro FOOD&IDEA MARKET(東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル1F)

多様なアクティビティーがコラージュするときヒト、モノ、そしてアートの重なり代

有楽町microは、あらゆる時間軸にあるヒトとモノが、特徴や背景を問わずに交差することを許容する市場である。この心地よい雑多のなかで、ナカムラクニオが解説する東京ビエンナーレを聞きながら(ArtStickerプログラム)、美術館と化した東京の旅路、次なる目的地に思いを馳せよう。

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有楽町ビル(東京都千代田区有楽町1-10-1)

31メートルの旅路

東京の多くの場所では、様々な幅・高さ・色・素材の建物が集積的に乱立し、ほどよい雑多感がまちを特徴づけている。そんな中、大丸有の高層ビルは、低層部と高層部が明確に分かれており、高さが統一された低層部が、整然とした風景を生み出している。このビル群が織りなす「31メートルの風景」は、旧建築基準法上の、高さを31メートル(100尺)に規制する条例のレガシーである。新有楽町ビルの地上から屋上へ、変わらないことを選択した「高さ」の中を移動する体験そのものを、ひとつの物語として心に刻もう。

アートプロジェクト
Spirit of the Land 〈地の精神〉 (西村雄輔)

新有楽町ビルヂング(東京都千代田区有楽町1-12-1)

計算と遊戯のはざまに。

青いタイルと独特な窓。60年代から有楽町の街並みを特徴づけてきた、重厚な外観の新有楽町ビルヂング。一歩中に踏み込めば、民芸調の陶板タイルの壁面と、ステンレス鏡面仕上げの手すり。どこからが計算され、どこからが遊び心なのか。魅力的な空間は、理由など存在しない。ここは、答えを探す場所でなく、遊びのボキャブラリーを増やす場所。

アートプロジェクト(AR作品)
We’ll meet again 2020 (椿昇)

芸術巡りはまだ続きます。適度な水分補給・休憩は忘れずに。

有楽町駅(東京都千代田区有楽町2丁目)

にぎわいを見守ってきた駅

日本初の高架橋駅である有楽町駅は、有楽町のデパート、劇場、映画館を訪れる人々の玄関口。大がかりな工事の末、1910年に完成してから、関東大震災、太平洋戦争を耐え抜き、たくさんの人を見送り、迎えてきた。そんなそぶりは全く見せぬまま、人々がそれぞれの目的地へ行き来する姿を、今日もただ静かに見守っている。

●ストーリーテラー2021/見なれぬ景色へ
大丸有で逢いましょうⅤ〈有楽町駅〉 (上柳昌彦)

三愛ドリームセンター(東京都中央区銀座5-7-2)

過去と未来のランドマーク

銀座4丁目交差点に君臨する、総ガラス円筒型のランドマーク。三愛ドリームセンターは、竣工当時の1963の人々が夢に描いた未来像の具現化そのものであり、これまでに名だたる大企業の広告を掲出してきた。都市の中のランドマークは、そのコンテクストに依存する。この58年間、時代とともに劇的に変化してきた風景の中で、未だ凛々しくランドマークとして機能している事実は、市村清が建物に込めた魂そのものが、今に引き継がれている証であり、ここから今の銀座を俯瞰してほしい。

アートプロジェクト(AR作品)
Spinout Hours ~ 弾き出された2時間と、そのいくつか (遠山正道)

GINZA SIX(東京都中央区銀座6丁目10-1)

東京に架ける、暖簾と庇。

東京は、過去現在未来が入り混じった都市だ。時代が変われば、色々なものが必然的に役割を終える。でも、変わらないでほしいと願うものも、たくさんある。建築家谷口吉生がGINZA SIXに込めた思いは、時代の変化に適応する「のれん」と、永続的な価値をもたらす「ひさし」、すなわち、変わらなければいけないものと、変わってほしくないものを共存させることであった。変化を受け入れ、新しい目線で東京を読み替えると、未来は想像していたものより遥かに楽しいかもしれない。

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OKUROJI(東京都千代田区内幸町1-7-1)

山手線と京浜東北線が走る、1910年に開通した煉瓦アーチの高架橋。1942年に使用開始した、鉄筋コンクリート造の東海道線高架橋。1964年に使用開始され、他よりも高さの高い東海道新幹線高架橋。有楽町駅と新橋の間に位置する日比谷OKUROJIは、時代・構造・目的地がそれぞれ異なる、3つの高架橋が融合する奇跡の300メートルである。偶然性と必然性が複雑に絡み合うこの場所で、異なる速度をもつヒトとモノが出会い、コミュニケーションの種が生まれる。そんな瞬間を、目撃したいのだ。

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アートプロジェク
動く土 動く植物 (村山修二郎)

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