静謐と喧騒が共存するアートプロジェクトの発信地を行く

エリア 神田・湯島・上野・蔵前

展示会場 休憩所 ストーリーテラー

2005年に統合により閉校した千代田区立練成中学校の校舎を改修し、10年前に誕生したアートセンター「アーツ千代田3331」。このルートでは3331から発し、東京ビエンナーレ2020/2021の開催期間中も、神田界隈へと伝播し続けるアートプロジェクトの現在進行形を、点在する文化資源とともに訪ね・歩く。秋葉原電気街の喧騒、静謐な湯島聖堂、神田っ子の誇り・神田明神などいくつもの聖域を抜け、モダンな「聖橋」の欄干で江戸東京の歴史と今を俯瞰する。

湯島駅

まずはアーツ千代田 3331へ。感性磨かれるアートに出会い、街の新たな魅力を見つけてみよう。

アーツ千代田 3331(東京都千代田区外神田6-11-14)

海外から国内まで、多彩なアーティスト達が各所で発表
私の知らない東京をアートで発掘する旅、ここから始まる。

いうまでもなく日本各地では、現在進行形で少子化が深刻化し、廃校となる学校が後を絶たない。廃校になってしまったかつての錬成中学校は、江戸っ子たちが集い、賑わいの絶えない場所であった。一時は人の気配が消えてしまったが、この場所に宿り続けていた「人をつなぐ」魂は引き継がれ、人とアートをつなぐ文化拠点へと姿を変えて生き返った。アーツ千代田 3331は、かつては崇高な一部の人の存在であった芸術を民主化し、アートによって人と人とがつながる可能性を現在も証明し続け、廃校が成し遂げた変貌は、その行為そのものの体現化なのではないか。

公式サイト 

●アートプロジェクト
【1階3331ギャラリー】
日程:7月10日(土)〜9月5日(日)
《家族との晩ご飯へ贈られる絵画 東京編》アリーナ・ブリゥミス+ジェフ・ブリゥミス

【1階101】
日程:7月26日(月)〜9月5日(日)
《トナリ》西原 珉

【1階東口廊下】
日程:7月10日(土)〜9月5日(日)
《「抱っこ紐に次男、ベビーカーに長男」では 無理ゲーなダンジョンの攻略方法》藤原佳恵

【2階206】
日程:7月10日(土)〜9月5日(日)
《スイート・デモクラシー》鈴木真梧

【2階体育館】
日程:8月17日(火)〜9月5日(日)
《kaekko Expo.》藤 浩志

【屋上】
日程:8月20日(金)〜9月5日(日)
《モダンファート 第2号 特集 社会的距離の思い出》伊藤ガビン

長谷川ビル(東京都千代田区外神田6-12-5)

地域が変わりゆくさまを、見守ってきた。

大通りから路地に一歩踏みこみ、練成通りへと歩みを進める。湯島や秋葉原の雑多な喧騒とは切り離されたこの場所は、神田の人々の活気はむしろ強くなる一方である。そこにたたずむ築35年の長谷川ビル。かつての錬成中学校がアートセンターと姿を変えて10年、アートにより街の景色をが変わっていく様を、神田五軒町(外神田6丁目)の人々と一緒に静かに見守ってきた。そして今、インフォメーションセンターや地域住民を対象とした作品づくりの会場として、変わりゆく景色へと参加した。

●総合インフォメーションセンター

●ソーシャルプロジェクト
日程:7月10日(土)〜9月5日(日)
《災害対応力向上プロジェクト》オンデザイン

ワンス・アポン・ア・タイム(東京都台東区上野1-3-3)

時代が交差する空間で描く、自分だけの戯曲

明治初期からひっそりと佇む、レンガ造りの蔵。神田のまちの人々に愛されている、ここちよいバーと姿を変えた現在では、ここを訪れるひとりひとりが、時空を超えて、それぞれの「ワンス・アポン・ア・タイム」の戯曲とアートの重なりに、想いをはせているのではないだろうか。

●アートプロジェクト
日程:7月10日(土)〜9月5日(日)
《オセロ》
陳 飛豪(チェン・フェイハオ)

燕湯(東京都台東区上野3-14-5)

下町の名銭湯で、お湯と芸術を浴びる

江戸の三大やっちゃば(青物市場)があった名残で、現在も早朝から湯を沸かし人々を迎えている燕湯。銭湯文化を守るため日々奔走する建築家・栗生はるかが、この東京を代表する名湯を解説。銭湯は建築・造形・絵画・体験型の総合芸術? 解説を聞いた後は、ぜひ暖簾をくぐってひと浴びを!

公式ツイッター

●ストーリーテラー2021/見なれぬ景色へ
「江戸東京の建物がたり1 − 上野の燕湯」栗生はるか(一般社団法人せんとうとまち代表) 

2k540 AKI-OKA ARTISAN(東京都台東区上野5-9)

人の思いが新陳代謝する、鉄道高架下

「青海3丁目地先」は、2020年6月に住居表示が行われたばかりの、生まれたての場所である。2k540という場所が、東京駅からの距離を表す名前を持ち、かつて職人のまちであった御徒町の過去を現在と結んでいるように、アートは、まだ見知らぬ場所が誰かの心のよりどころになるきっかけを作る。

公式サイト 

●アートプロジェクト
日程:8月5日(木)〜8月31日(火)*水曜定休
《青海三丁目 地先の肖像》2.5 architects 森藤文華+葛沁芸

神田明神(東京都千代田区外神田2-16-2)

人と人とのつながりの名残を浮き彫りにする。

門馬美喜が描く馬は、流通や戦争の立役者として、人間の歴史の発展に貢献してきた。この名高い歴史建造物である神田明神が、関東大震災、第二次世界大戦を乗り越え、ふたたび息を吹き返すきっかけを作ったのは、東京の人々であった。この空間で体感する歴史はすなわち、この建物が東京の人々と共に生きてきた名残なのであり、アートはこの歴史を少しだけ浮かび上がらせる。

公式サイト 

●アートプロジェクト
日程:7月10日(土)〜8月1日(日)
《千年前の地を走る馬》
門馬美喜

ARアートを通して、歩いてきた街をふりかえってみよう。

湯島聖堂(東京都文京区湯島1-4-25)

祈りの空間で、自分と向き合う。

かつて徳川幕府がひらいた学問所・湯島聖堂は、いくつもの路線が交差する御茶ノ水駅のすぐ近くにあって、訪れる人の精神を鎮めるオアシスのような場所。ここで東京ビエンナーレ2020/2021総合ディレクター・小池一子は、自ら2名のアーティストの展示をキュレーションする。アートで表現された東京への祈りに耳を澄まそう。

公式サイト 

●アートプロジェクト
日程:7月11日(日)〜7月29日(木)
《Praying for Tokyo 東京に祈る─ひかりのことづけ》
宮永愛子


日程:8月2日(月)〜8月10日(火)
《Praying for Tokyo 東京に祈る─「Well Temperament 良律」》
柳井信乃

ARアートを通して、歩いてきた街をふりかえってみよう。

聖橋(東京都千代田区神田駿河台4-5-1)

東京の断面にかかる橋

文化資源研究の第一人者・吉見先生がお薦めする、江戸東京を代表するトポグラフィー(地形)を見渡せる場所が、ここ「聖橋」である。関東大震災からの復興を象徴するモダンな橋の真ん中で、視線を水平・垂直に動かしながら、江戸東京の地形・宗教・交通の歩みを一望しよう。

●ストーリーテラー2021/見なれぬ景色へ
「江戸のトポグラフィー/聖橋」
吉見俊哉(社会学者) 

総武線御茶ノ水~秋葉原駅間旅籠町橋高架下(東京都東京都千代田区外神田1-4-3)

電気街の魂がしぶとく根を張る、鉄道高架下。

電気街・秋葉原の町並みは、戦後の高架橋の下から生まれた。日本の鉄道技術の発展を物語る、高架橋。その下にパラサイトのごとく寄生する建物たち。東京の人々の思いは、時代とともに風景として書き加えられ、そして編集され続けてきた場所をさらに引き継ぐ。

●アートプロジェクト
日程:8月1日(日)~9月5日(日)
《球体9》
立花文穂

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